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心拍パターンを利用した新しい生体認証『Nymi』

生体認証

生体認証といってまず最初に思いつくのは指紋認証や静脈認証などではないだろうか。iPhoneが5Sで初めて指紋認証システムを取り入れたことや、銀行でも手の平や指の静脈認証システムを取り入れたことで、生体認証と関わる機会は確実に増えた。

 

生体認証はバイオメトリクス(biometrics)認証とも呼ばれ、人間の身体的特徴や行動的特徴の情報を事前に登録し、認証時にセンサで取得した情報と一致するかを確認することで認証を行うシステムだ。

従来の文字や数字のパスワードだと、他人に見られる、自分のパスワードを忘れてしまう、などの問題があった。

これに対し、指紋や静脈は個人特有のため、他人がなりすますことが極めて難しい。また、パスワードを覚える必要もないため本人もとても楽になる。

 

生体認証を実用化する際に求められるのが、怪我・病気・先天性欠損により生体認証ができない人々への対応。また、顔認識のように経年変化により 認証が出来なくなってしまうことも問題である。

さらに、生体情報は任意に更新することができないため、一度生体情報を盗まれてしまうと一生安全性を回復できなくなるかもしれない。

 

このため、より安全で便利な生体認証の、研究・実用化は現在盛んに行われている。

 

新しい生体認証システム

新しい生体認証システムとして今注目されているのが心拍を使ったものだ。

カナダ・トロントにある会社Bionymの開発した「Nymi」というリストバンド製品はご存知だろうか。

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Nymiは心電図を読み取るセンサーを内蔵しており、ユーザーの心臓の鼓動の波形を読み取る。心拍パターンは個人によって異なり、また年齢を重ねても変化しない。

Nymiの使い方はとても簡単。ユーザーはNymiを片方の手首に巻き、もう一方の手でバンドに触れる。

 

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あらかじめ登録しておいた心拍のデータと一致すると、本人であると認識される。Nymiをつけている間は設定しておいたデバイスなどと無線で連動し、操作が可能となり、いったん外すと再認証が必要となる。

 

『Nymi』の可能性

Nymiは加速度センサーとジャイロスコープも内蔵している。

これは、ジェスチャーで機器を操作できるようになる可能性をもっているということを示唆している。

将来的にはジェスチャーで、車のドアをあけたり、TVを操作したり、電気をつけたりけしたり、空調を起動したり、音楽をかけたりすることも出来るようになるかもしれない。また、手をかざすだけで決済できるようになるかもしれない。

そうなると今まで使っていた鍵、リモコン、クレジットカードなど様々なものが不要となる。

このリストバンド1つで、様々なデバイスの操作が可能になるのだ。

 


Nymi by Bionym - YouTube

 

 

『Nymi』の安全性

 ではNymiの安全性は保証されているのか。

生体認証はとても便利なシステムだが安全性が守られていなければ意味がない。様々なデバイスを一つのリストバンドで操作することとなれば、Nymiにはより高い安全性が求められるだろう。

1000人を対象にテストを行ったところ、Nymiの精度は指紋認証よりわずかに低く、顔認証よりは精度が高い、という結果になった。

ちなみに、国内大手メーカーのNEC社製品の顔認証精度は99.7%と発表されているため、Nymiの安全性はかなり高いと考えて良いだろう。

 

Nymiの今後

Nymiの課題としては、心拍の変化にどう対応するか、である。

心拍のパターンは年齢を重ねても変わらないが、激しい運動をした後では心拍リズムが変化してしまい、認証が出来ないのだ。

またBinymのCEOであるKarl Martinは、「長期的目標はNymiを着けているいる人が着けていることを忘れることだ」と話す。

 

Nymiは現在予約を受け付けており、1個約1万円($99)で購入できる。一般的に広く普及している個人向けの指紋認証機器の価格が6千円〜2万5千円であるのに比べると、Nymiは安価であることが分かる。

 

Nymiが広く普及し、本当にジェスチャーによる操作が可能になれば

パスワードという概念がない世の中になるだろう。

Nymiが実際に社会にでるとどうなるのか、今後が楽しみだ。

また、これを期に心拍パターンを利用した他のサービスや機器の開発が進められるかもしれない。

Nymiの予約はこちらから。